プログラム医療機器と保険

治療用アプリ・診断AIの処方数と算定実績——
NDBオープンデータで見るプログラム医療機器(SaMD)

治療用アプリや診断を助けるAIの保険適用が始まっています。国のレセプト集計から、2024年4月〜2025年6月の15か月分の算定数を追いました。

日本では2018年以降、診断を助けるプログラムや治療用アプリが保険適用されています。

医療機器の保険適用区分には、C1(新機能)とC2(新機能・新技術)があります。この区分で、患者が自分で使う治療用アプリや、診断を助けるAIが保険適用されています。大腸内視鏡のAIのように、診療報酬の改定で新しい加算ができた例もあります。

保険が使えるようになった製品の算定数を、厚生労働省のレセプト(診療報酬明細書)の集計データで確かめました。

NDBオープンデータ(レセプト集計)で算定回数を調べる

NDBオープンデータは、全国の保険診療のレセプトを、厚生労働省が項目ごとに集計して公開しているものです。今回使ったのは次の2つです。

表1 使ったデータ
データ対象公開
第11回2024年4月〜2025年3月診療分(年次版)2026年6月
第12回 月次公開2025年4〜6月診療分2026年10月(10月16日の再掲載版)

出典:厚生労働省「第11回NDBオープンデータ」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000177221_00017.html
厚生労働省「第12回NDBオープンデータ」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000177221_00020.html

保険で評価されるプログラム医療機器は、製品や機能に対応する項目で算定されます。NDBオープンデータでその項目の行を見ると、算定された回数がわかります。複数の製品が同じ項目で算定される場合は、製品ごとの回数は分かりません。

表2 製品と、NDBで見る行
製品企業用途見る行
CureApp HT株式会社CureApp高血圧の治療補助アプリ特定保険医療材料227(高血圧症治療補助アプリ)
nodocaアイリス株式会社咽頭の画像からインフルエンザの診断を助けるAI検査D296-3
大腸内視鏡のAI(CADe)複数社大腸ポリープの検出を助けるAI病変検出支援プログラム加算

2024年5月以前は、HTもnodocaも既存の点数を準用して算定されていた。
出典:中央社会保険医療協議会(中医協)「医療機器の保険適用について」令和4年9月収載予定 https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000972473.pdf、令和4年12月収載予定 https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000989561.pdf、「プログラム医療機器に対する評価について」https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001197876.pdf

注意が要るのは、2024年6月1日です。この日に診療報酬改定が施行され、HTはC1区分として改めて保険適用されました。そのため、HTは2024年4〜5月と6月以降で、見る行が違います。

HTは、2024年5月までは既存の点数を準用して算定していました。6月以降は、アプリが特定保険医療材料として価格を持つ形に変わりました。nodocaは、準用の点数から、D296-3(305点)として独立した項目になりました。点数は変わっていません。NDBでは、nodocaの2024年4〜5月の回数も同じ行に載っています。

読むときの注意が3つあります。1つめは、10未満の値が「-」で伏せられることです。2つめは、保険診療の数字だけで、自費の利用は含まれないことです。3つめは、2025年4〜6月は月次公開の値で、年次版の値とは月遅れの請求の分だけ一致しないことがある点です。

治療用アプリ・診断AIの3製品の処方数と算定回数

表3 3製品の算定数(四半期ごと)
製品2024年4〜6月2024年7〜9月2024年10〜12月2025年1〜3月2025年4〜6月
CureApp HT(算定回数)3,0802,7882,1961,5951,670
nodoca(算定回数、外来)5,3024,23237,07726,8458,361
大腸内視鏡のAI(算定回数)7,468(6月のみ)28,29439,52743,31152,989

出典:厚生労働省「第11回・第12回NDBオープンデータ」(公費含む)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000177221_00017.html、https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000177221_00020.html
HTの2024年4〜5月は「高血圧症治療補助プログラム加算(初回月から6か月目まで)」の算定回数。2024年6月以降は特定保険医療材料227の数量。大腸内視鏡のAIは外来と入院の合計で、加算は2024年6月に新設。月次公開と年次版の値は一致しないことがある(https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001727731.pdf)。

高血圧治療補助アプリ「CureApp HT」の処方数(新規導入と利用)

HTは、成人の本態性高血圧症の治療を補助するアプリです。患者が自宅で血圧を記録し、生活習慣の改善を進めます。算定は使い始めた月から6か月までで、医療機関には施設の要件もあります。

2024年4月以降でHTの新規導入が最も多かったのは、5月の328人でした。その後は減る傾向で、2025年2月は98人でした。6月以降の値は、プログラム医療機器全体の「導入期加算」の回数です。この期間、HT以外の製品の指導管理料は月10未満でした。

利用全体は、2024年6月以降で最も多い7月の982回から、2025年6月の529回まで減りました。2025年4〜6月は月500回台で、前年同期のほぼ半分です。

2024年5月までは、準用の技術料として月830点(8,300円)で算定していました。6月以降は、アプリを特定保険医療材料(7,010円)として算定します。指導管理は、プログラム医療機器等指導管理料(90点)として別に算定します。

出典:中医協「プログラム医療機器に対する評価について(令和6年6月1日収載予定)」https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001197876.pdf

インフルエンザ診断支援AI「nodoca」の算定回数

nodocaは、専用のカメラで喉を撮影し、画像と問診の情報からインフルエンザの診断を助けます。点数は305点です。

nodocaの算定回数は、2024年12月に28,005回でした。8月の1,114回の約25倍です。12月と1月の2か月で、年間の約6割を占めます。

2024/25シーズンのインフルエンザは、2024年第52週(12月23〜29日)の定点当たり報告数が64.39で、1999年以降で最も多くなりました。

出典:厚生労働省/国立感染症研究所「感染症週報(IDWR)」2024年第52週(通巻第26巻第52号)https://www.wic-net.com/material/static/00018377/00018377.pdf

2025年4〜6月は、前年同期より58%多い回数でした。

大腸内視鏡AI(病変検出支援プログラム加算)の算定回数

大腸内視鏡のAIは、2024年6月に加算(60点)が新しくできました。新設月(2024年6月)の7,468回から、2025年6月は18,576回になりました。新設月の約2.5倍です。

加算は複数の企業の製品が対象で、製品ごとの回数は分かりません。

加算は、内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術に付きます。AIを使った検査の件数ではなく、切除に付いた加算の回数です。対象は、使わない場合と比べて診断精度が上がることが示された製品に限られます。内視鏡検査の専門の知識と5年以上の経験を持つ医師が使い、使用中の画面の写しを診療録に添付することが条件です。算定は一連の大腸内視鏡検査につき1回です。AIを使わずに切除した場合は算定できません。

出典:令和6年度 留意事項通知(K721)https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001293312.pdf

市場規模予測(ピーク時)と処方数・算定回数の実績

保険適用を決める中医協の資料には、「市場規模予測(ピーク時)」が載っています。2024年度の実績と並べたのが表4です。

表4 市場規模予測(ピーク時)と2024年度の実績
製品市場規模予測(ピーク時)実績(2024年度)
CureApp HT5年度目に使用患者7万人/年、21.9億円/年保険適用から3年度目。新規導入 約2,100人(前年度から続けて使った人を含む使用者は約2,900人)。算定額 約0.7億円(算定回数9,659回)
nodoca8年度目に使用患者130万人/年、39.7億円/年保険適用から3年度目。算定回数73,494回。算定額 約2.24億円

出典:中医協「医療機器の保険適用について」令和4年9月収載予定 https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000972473.pdf、令和4年12月収載予定 https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000989561.pdf、第11回NDBオープンデータ https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000177221_00017.html
予測は中医協資料の記載。予測の金額は「予測販売金額」で、実績の算定額(点数×10円)とは定義が違う。HTの新規導入の2024年6月以降は、導入期加算(プログラム医療機器全体)の回数。HTの使用者は推計で、2024年4月の算定回数1,040から同月の新規導入198を引いた842を、前年度から続けて使った人として新規導入に足した。

HTのピーク時の予測は、5年度目に使用患者7万人/年です。3年度目の2024年度の新規導入は約2,100人で、予測の約3%です。前年度から続けて使った人を含む使用者は約2,900人(推計)で、予測の約4%です。

次の3製品は2025年9月以降に保険適用されたため、NDBオープンデータにはまだ算定のデータがありません。公開されているのは2025年6月診療分までです。表5には、中医協の資料にある市場規模予測だけを示します。

表5 2025年9月以降に保険適用された治療用アプリ(NDBのデータはまだない)
製品企業用途保険適用償還価格(算定の単位)市場規模予測(ピーク時、決定価格ベース)NDBの算定データ
CureApp AUD株式会社CureAppアルコール依存症の飲酒量低減治療補助2025年9月7,010円(月1回・6か月まで)5年度目に約1万人/年、7.2億円/年まだない
Medcleサスメド株式会社不眠障害の治療支援2026年6月24,100円(1回限り)7年度目に約2万人/年、5.0億円/年まだない
ENDEAVORRIDE塩野義製薬株式会社小児ADHDの治療補助2026年6月14,500円(患者1人2回まで)5年度目に約7万3千人/年、10.6億円/年まだない

出典:中医協「医療機器の保険適用について」令和7年9月1日収載予定 https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001517949.pdf、令和8年6月1日収載予定 https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001699500.pdf
価格は決定価格、予測は決定価格ベース。NDBオープンデータの最新公開分は2025年6月診療分(2026年10月29日時点)。保険適用は中医協資料(2026年10月28日開催分まで)で確認した範囲。

保険点数から見た算定額

算定回数に点数や価格をかけると、診療報酬として算定された額(患者の自己負担を含む)の目安が出ます。

表6 算定額の目安
製品2024年度の算定額
CureApp HT(アプリ部分)約7,050万円/年
nodoca(検査料)約2.24億円/年
大腸内視鏡のAI(加算)約7,100万円(10か月分)

1点10円で計算した概算。HTは2024年4〜5月が830点、6月以降が7,010円。nodocaは305点、大腸内視鏡のAIは60点。
出典:第11回NDBオープンデータ https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000177221_00017.html、第12回NDBオープンデータ https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000177221_00020.html、「プログラム医療機器に対する評価について」https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001197876.pdf

これは企業の売上そのものではありません。HTは医療機関が算定するアプリ代に当たる額です。nodocaと大腸内視鏡のAIは、医療機関が受け取る検査料や加算の額です。

まとめ

  • CureApp HTの2024年度の新規導入は約2,100人です。ピーク時の市場規模予測(5年度目に使用患者7万人/年)の約3%にあたります。前年度から続けて使った人を含む使用者(推計 約2,900人)では約4%です。2025年4〜6月の利用は、前年同期のほぼ半分でした。
  • nodocaの2024年度の算定回数は73,494回で、12月と1月の2か月で年間の約6割でした。
  • 大腸内視鏡のAIの加算は、2024年6月の新設から1年で、月の回数が約2.5倍になりました。
  • 2025年9月以降に、アルコール依存症の飲酒量低減アプリ、不眠障害アプリ、小児ADHDアプリが保険適用されました。これらの実績は、まだNDBに出ていません。

出典

  1. 厚生労働省「第11回NDBオープンデータ」
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000177221_00017.html
  2. 厚生労働省「第12回NDBオープンデータ」月次公開
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000177221_00020.html
  3. 中医協「医療機器の保険適用について(令和4年9月収載予定)」(CureApp HT)
    https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000972473.pdf
  4. 中医協「医療機器の保険適用について(令和4年12月収載予定)」(nodoca)
    https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000989561.pdf
  5. 中医協「プログラム医療機器に対する評価について(令和6年6月1日収載予定)」
    https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001197876.pdf
  6. 中医協「医療機器の保険適用について(令和7年9月1日収載予定)」(CureApp AUD)
    https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001517949.pdf
  7. 中医協「医療機器の保険適用について(令和8年6月1日収載予定)」(Medcle・ENDEAVORRIDE)
    https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001699500.pdf
  8. 令和6年度 留意事項通知
    https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001293312.pdf
  9. 厚生労働省「NDBオープンデータの月次公開について」
    https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001727731.pdf