2026年6月|PMDAがSaMD「審査のポイント」4件を発出
2026年6月22日、PMDAプログラム医療機器審査部より、以下4件の「審査ポイント(Draft)」が発出されました。
- Digital Therapeutics の審査ポイント
- 手術中画像の認識支援に使用するプログラム医療機器の審査ポイント
- 内視鏡画像を用いた診断に使用するプログラム医療機器の審査ポイント
- 認知機能等の検査に使用するプログラム医療機器の審査ポイント
背景
2022年6月7日に閣議決定された「規制改革実施計画」<医療・介護・感染症対策>(4)質の高い医療を支える先端的な医薬品・医療機器の開発の促進 No.13「プログラム医療機器(SaMD)に関する承認審査等の見直し」に基づき、厚生労働省は、類型ごと、対象疾患ごとに承認実績が存在するSaMDについて、早期に登録認証機関による認証に移行するよう、産業界の協力も得つつ、認証基準の策定及び改正を主体的に行うこととなりました。
今回発出された4件の審査ポイントは、いずれもPMDAが対面助言や製造販売承認審査で蓄積した経験を踏まえ、留意事項や考え方を示したものです。
1. Digital Therapeutics(DTx)
- 臨床試験(治験)デザインに関する基本的な考え方:シャムアプリ等を用いた二重盲検ランダム化比較試験を検討すること。
- 特定臨床研究データの薬事利活用に言及:特定臨床研究で得られた試験成績の承認申請への利用は、評価の可否、根拠資料の保存状況、治験の実施・再現の困難度等を踏まえて個別判断。
- コントロールアプリは「より保守的な対照群」:盲検性を保ちつつ効果を持たない真のシャムアプリの作成方法は確立されていないと認めた上で、有効性を発揮する可能性のある対照群用アプリを「コントロールアプリ」と定義。一定の有効性を発揮しうるコントロールアプリの対照群は、標準治療のみの対照群より高い成績を示すと想定されるため保守的であり、これに対する優越性を示せれば臨床的有用性を説明できる可能性があると整理。
- 標準治療又は通常治療のみを対照群する場合:対照群にはコントロールアプリを用いず、標準治療又は通常治療のみとする群構成を検討する場合も想定される。この場合、プラセボ効果、ホーソン効果等の心理的な影響が、開発品群のみならず、対照群に対してもどの程度影響しているかを定量的に説明することが必要。
- コントロールアプリの設計指針:有効性を発揮すると考える機能を排除すればおおむね問題ないが、排除しすぎるとコントロールアプリであることが露見するため、セルフモニタリング機能(日記機能等)は残すことを例示。
- 上乗せデザインの推奨:DTx製品は医薬品等と併用しながら治療を進める可能性が高いため、開発品群・対照群とも標準治療・通常治療に上乗せする群構成が市販後の使用状況を想定した評価につながると整理。
- 主観的評価指標には二重盲検RCTが原則:自記式評価等の主観的指標を主要評価項目とする場合、原則としてシャムアプリ等を対照としたニ重盲検ランダム化比較試験が必要。
- 非標準的な主要評価項目には探索的治験での裏付けが必要:検証的治験で標準的でない評価項目を主要評価項目としたい場合、探索的治験で情報収集が必要。
2. 手術中画像の認識支援に使用するプログラム医療機器
- 使用目的を3類型に整理:①解剖学的構造物等の表示による術中の視覚支援、②一般的な切離ライン等の手技ガイド情報の提示、③有害事象の発生低減等。No.2・No.3はNo.1を基本に効果を追加する構成で、No.1の記載は全類型に共通。
- 現行承認品はすべてNo.1:現在承認されている手術用画像認識支援プログラムはNo.1の使用目的で承認されていると明記。No.2・No.3は今後の開発を見据えた記載。
- 製品性能評価:解剖学的構造物の推定精度の評価項目として、Dice係数、IoU、Simpson係数等を具体的に例示。臨床的に適切な精度基準を設定できない場合は、臨床的有用性側の評価が必要。
- 「視認性への悪影響」評価を明確に要求:推定結果の表示が術者の認識を阻害する、他臓器上への誤表示で誤認させる、表示方法の問題で視認できない等のリスクを指摘し、開発品使用時と非使用時の術者の視認性への影響を可能な限り定量的に評価するよう要求。
- 手技ガイドは「多くの術者と同程度の正確さ」:No.2では、ガイドラインや教科書で示される一般的な切離ライン等を、当該術式を実施する多くの術者と同程度の正確さで提示できることの評価が必要。
- 「より最適な切離ライン」はNo.2の範囲外:術後予後の改善等を効果とする場合はNo.2を逸脱し、No.3と同様に治験での術後経過の評価が必要と明確に線引き。
- 有害事象低減の標榜には治験による検証が必要:No.3では有害事象の発生が実際に防げていることの臨床試験による検証が必要。発生割合の低い有害事象では統計学的検証に多くの症例数が必要
- 手術時間短縮は「使用目的又は効果」に記載不可:迅速な手術や手術時間の短縮は臨床的な効果ではないため、「使用目的又は効果」欄への記載は適切でないと明記。開発コンセプトとの関係で注意を要する記載。
3. 内視鏡画像を用いた診断に使用するプログラム医療機器
- 成績向上の評価が必要:CADe・CADxいずれも、①開発品の解析結果により使用者の検出成績(CADe)/鑑別成績(CADx)が向上すること、②開発品が臨床的に意義のある検出性能を有すること、の2点を評価すべき内容として整理。
- 評価方針:(a)臨床導入状況を再現した仮説検証試験で臨床的有用性を直接評価し、別途製品性能を評価する方針、(b)文献・ガイドラインに基づき臨床的有用性を説明できるパフォーマンスゴール(PG)を設定し、PGに対する優越性・非劣性の検証で有用性と性能を同一試験で評価する方針、のいずれでも問題ない。
- PGの妥当性が最重要論点:PGを用いる評価方針を選択する場合、PGの妥当性が重要な論点であり、適切な試験設計が最も重要と強調。
- CADxの正解は病理組織学的診断:CADxは鑑別診断の補助を行うため、性能評価試験の正解には通常、病理組織学的診断の判定結果を用いると明記。
- CADx開発品をCADeとして承認取得:①早期上市を目指す場合、②鑑別性能が想定以下でも検出性能に臨床的意義がある場合、③病理診断等の正解情報が入手できない場合等に、鑑別機能の無効化・削除等の製品仕様変更を行った上でCADeとして承認取得できる選択肢を明示。
- 既存審査ポイントとの接続:CADeの評価項目・評価方法は「病変検出用内視鏡画像診断支援プロトコルの審査ポイント」(2023年3月7日)を参照するよう指示しており、既存文書との関係が整理された。
4. 認知機能等の検査に使用するプログラム医療機器
- 使用目的を3類型に整理:①神経心理検査(認知症の診療支援)、②MCI又は軽度認知症疑い患者のスクリーニング・専門施設への紹介、③認知症の診断補助、の3類型ごとに評価すべき内容を表形式で整理。
- 正解設定の困難さ:認知機能等は評価者・評価時期・評価方法で結果が変わりうるため頑健な正解設定は難しいとし、No.1では正解との一致ではなく、既存の神経心理検査(可能な限り複数)との一致度を評価するアプローチを提示。
- 独自指標を用いる場合:MMSEや長谷川式等の既存質問票に基づかない独自の検査を行うプログラムでは、どのような機能を検査しているのか、スコアの臨床的意味は何かの確認が必要と明記。
- モニタリング標榜には追加評価:「使用目的又は効果」欄に患者状態のモニタリングを記載する場合、検査のばらつきを考慮しても経時的な患者状態の変化を鋭敏に検出できることの評価が必要。
- No.2・No.3の性能評価試験デザイン:(a)開発品単独群 vs 従来診療群の非劣性/優越性、(b)従来診療+開発品上乗せ群 vs 従来診療群の優越性、(c)文献等に基づく達成基準(感度・特異度)の評価、の3方式を具体的に提示。
参考
本審査ポイント(Draft)について気になる点・確認したい点があれば、以下のURL(PMDAウェブサイト)から確認できます。
https://www.pmda.go.jp/review-services/drug-reviews/about-reviews/devices/0058.html