乳癌診断支援AIソフトウェア|
超音波画像から病変候補を検出補助

製品の概要と臨床的意義

本品は、汎用超音波画像診断装置で撮影・デジタル化された乳房超音波画像をコンピュータ処理し、精密検査の必要性が疑われる所見の有無を提示する医療機器プログラムです。深層学習の物体検出モデルを用いて確率をスコア化し、病変候補部位を自動で検出します。

本プログラムはサーバ(院内または汎用クラウド)上で稼働し、画像管理システムや電子カルテと連動して利用します。検出結果は、BI-RADS(乳房画像診断の国際的ガイドライン)のカテゴリー予測に基づき、視覚的に分かりやすく表示されます。

医療機器承認情報

臨床性能試験(導入評価試験)の全体像

本製品の有効性は、乳房超音波画像50枚を対象とした後ろ向き性能評価試験(2022年3月〜8月実施)により評価されました。

最大の特長は、読影する医師の「経験値」ごとにAIの導入効果を検証している点です。

項目 内容
対象画像 画像50枚(BI-RADS 1: 12枚、2-3: 25枚、4: 9枚、5: 4枚)
評価者(24名) ① 乳腺専門医(4名)

② 非専門医/経験豊富・乳房超音波画像の診断経験40症例以上(5名)

③ 非専門医/経験浅・乳房超音波画像の診断経験40症例未満(15名)
評価項目 医師単独(非導入群)と、AI結果を参照した場合(導入群)の正診率、感度、特異度、好転率・暗転率の比較

有効性・安全性の結果(試験データ詳細)

本プログラムを併用(導入群)することで、特に「経験の浅い非専門医」の感度(病変を見つける力)が劇的に向上し、専門医と同等レベルに引き上げられることが証明されました。

1. AI導入による正診率・感度の向上

全体として、正診率は69.3%から73.1%へ有意に上昇(p=0.005)しました。

評価者 感度(非導入群 → 導入群)
全体平均 89.1% → 99.7%
乳腺専門医 98.1% → 100%
非専門医(経験豊富) 96.6% → 100%
非専門医(経験浅) 84.6% → 99.5%

経験の浅い非専門医の感度が84.6%から99.5%へと大幅に向上しており、AIの支援によって「見落とし」がほぼゼロに近い水準まで引き上げられています。

2. 「暗転率ゼロ」の証明(見逃しの誘発なし)

AIを導入したことで、「本来はカテゴリー4以上が正解の画像だったのに、従来法による読影ではカテゴリー4以上と判定されたが、本プログラム併用時にはカテゴリー3以下と判定されてしまった割合(暗転率)」は、**全ての医師層において0.0%**でした。

これは、「AIを使ったせいで癌を見逃してしまう」というリスクが試験上発生しなかったことを意味します。

3. AI単体での高い基本性能

AIプログラム単体での性能評価(画像50枚)においても、カテゴリー4以上の病変候補部位に対する感度は94.4%(17/18)であり、画像当たりの偽陽性検出数も0.2と低く抑えられています。

4. 安全機能(アラート)の搭載

不適切な画像が入力された場合、誤診を防ぐためにAIがアラートを表示し、精密検査の必要性が疑われる所見の有無を表示しない安全機能が備わっています。

審査における「論点」と「考察」の深掘り

本製品の承認審査やラベリングにおいて、薬事戦略上の重要なポイントとなったのは「AIの限界(どのような時に間違えるか)をいかに透明化するか」という点です。

論点:AI特有の偽陽性・偽陰性のリスク

添付文書・ラベリングへの反映

上記の試験結果とリスク評価に基づき、添付文書では【使用上の注意】において、AIの過信防止や運用上の制限が詳細に規定されています。

ラベリング区分 具体的な記載内容と対応意図
【使用上の注意】

(重要な基本的注意)
最終判断の責任

→ 本プログラムによる検出結果のみで病変のスクリーニングや確定診断を行うことは目的としていない(確定診断ソフトではない)ことを明示しています。


正確な輪郭抽出の限界

→ 提示される病変候補部位は、病変部位の正確な輪郭を示すものではないと注意喚起しています。


偽陽性・偽陰性リスクの明示

→ 肋骨、乳腺症、Paget病、巨大病変、妊娠期・授乳期の乳房、乳房内異物を有する患者等の画像においては、偽陽性又は偽陰性を検出する可能性があるため使用時に注意するよう求めています。
【使用上の注意】

(その他の注意)
安全なネットワークの利用と運用

→ セキュリティに配慮されたネットワークに接続して使用することを定めています。また、指定した仕様の汎用IT機器へのインストールを求め、他のソフトウェアをインストールした場合の有効性は保証されないとしています。