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サスメド社の不眠障害治療用アプリの審査結果から学ぶべきこと

2023-09-12

2023年2月15日に「サスメド Med CBT-i 不眠障害用アプリ」が製造販売承認されました。この製品は新医療機器に該当するため、審議結果報告書およびSTEDが公開されており、機構の審査内容や製品の概要を読み取ることができます。このニュースレターでは不眠障害治療用アプリの審査結果を踏まえて、企業が学ぶべきことを記載していきます。

このレターの作成者の経歴はこちらです。
・LinkedInのページへ

以下の文献をもとに私なりの解釈をお伝えしていきます。
令和4年12月19日 医薬・生活衛生局医療機器審査管理課 審議結果報告書 SUSMED 不眠障害治療用アプリ Med CBT-i

上記は2023年2月に医療機器として薬事承認されたサスメド社の不眠障害治療用アプリの厚労省・PMDAが作成した審議結果報告書及び審査報告書です。

目次

  • 1 不眠障害治療用アプリの概要
  • 2 審議結果報告書・審査報告書とは?
  • 3 本品を処方できる患者(適応患者)について
    • 3.1 二次性不眠の患者も本品の適応患者に含めることの妥当性
      • 3.1.1 企業の説明
      • 3.1.2 機構側の判断
    • 3.2 薬物療法と併用すること、第二選択療法として使用することの妥当性
      • 3.2.1 企業の説明
      • 3.2.2 機構側の考え・判断
      • 3.2.3 治療用アプリの適応について、企業側が考えておくこと
    • 3.3 最大の課題

不眠障害治療用アプリの概要

2023年2月15日に製造販売承認された「サスメド Med CBT-i 不眠障害用アプリ」について、薬事における概要は以下のとおりです。

表. 不眠障害治療用アプリの概要

販売名 サスメド Med CBT-i 不眠障害用アプリ
申請者名 サスメド株式会社
承認日 令和5年2月15日(申請日 令和4年2月1日)
承認番号 30500BZX00033000
一般的名称 不眠障害用プログラム(新設)
クラス分類 Ⅱ
区分 新医療機器
使用成績評価期間 使用成績評価期間:3年11ヵ月
使用目的又は効果 不眠障害の治療において、医師が行う認知行動療法の支援を行う。
承認条件 不眠障害に関連する十分な知識を有する医師が、CBT-Iに関する知識や本品が提供するCBT-Iを十分に習得した上で本品を用いるよう、関連学会との協力により作成された適正使用指針の周知、講習の実施等、必要な措置を講ずること。
添付文書 リンク(古くなっている可能性があります)

上記が不眠障害治療用アプリとして承認されたサスメド社の医療機器プログラムの概要です。

審議結果報告書・審査報告書とは?

審議結果報告書と審査報告書は、厚労省およびPMDAが審査結果を記載したレポートです。

「審査報告書」及び「審議結果報告書」は、当該医薬品の審査経過、評価結果等を取りまとめたものです。 「審査報告書」にあってはPMDAが、 「審議結果報告書」にあっては厚生労働省が作成したものであり、承認後、速やかに掲載することとしています。

PMDAウェブサイト 審査報告書・申請資料概要

特に審査報告書は、企業とPMDAが審査プロセスで議論した内容の内、重要な論点(であったと考えられる内容)が記載されています。

さて、不眠障害治療用アプリの審査報告書では、7つの重要な論点(以下)が記載されています。

(1) 本品の臨床的意義について
(2) 主要臨床試験デザインの適切性
(3) 本品の有効性
 ① 主観的評価項目で評価することの妥当性について
 ② 有効性について
(4) 本品の安全性
(5) 総合的なリスクベネフィットバランス評価について
(6) 本品の臨床的位置づけ
(7) 本品の適正使用を含めた製造販売後安全対策について

上記のPMDA審査結果に対して、企業が考えておくべき対応として「適応患者」について考察していきます。

本品を処方できる患者(適応患者)について

本品の適応患者について、以下の2点が審査報告書の中で協議されています。

  • 1.二次性不眠の患者も本品の適応患者に含めることの妥当性
  • 2.薬物療法と併用すること、第二選択療法として使用することの妥当性
  • 実は「1.二次性不眠の患者」、「2.薬物療法と併用、第二選択療法として使用する患者」は治験では除外されており、なぜこれら2点が実臨床で使用可能なのかについて、報告書の中で記載されています。

    最終的には、1も2も条件付きで使用可能という結論になっています。

    以下で詳しく説明していきます。

    二次性不眠の患者も本品の適応患者に含めることの妥当性

    企業の説明と機構(PMDA)の判断は以下のとおり。

  • 企業の主張:精神疾患に起因する二次性不眠の患者は治験において除外されていたが、適応に含めることが可能と主張した。
  • 機構の判断:適切な対応(適正使用指針)および添付文書による情報提供を行うことで、適応に含めることが可能とした
  • 企業の説明

    精神疾患等に伴う「二次性不眠」を有する患者におけるリスク

  • 原疾患の治療が優先され本品による治療を継続的に実施できないことが挙げられる。
  • 上記リスクを低減するための方法

  • 本品から提供される情報を正しく理解し、患者が継続的な使用ができる状態であるかどうかを、原疾患の状態を踏まえて事前に精査する
  • 機構側の判断

    不眠障害の診療における、現状の二次性不眠に対する対応

  • 不眠障害の診断では、原発性不眠と二次性不眠を区別せず診断されるため、初診では原発性不眠と考えられていた患者が後に二次性不眠と診断されることもあり、原発性不眠と二次性不眠を区別することは困難
  • 治療においても、原発性不眠と二次性不眠の区別はなく、同じ治療法が提供される。
  • すなわち、二次性不眠の患者の中には原疾患の影響で本品を用いた治療に向かない患者も存在すると考えられる

    したがって、CBT-I の理解、本品の限界を十分に把握した医師が本品を用いた治療に不適切な患者を見極めることが必要。

    そこで、以下の対応を行うことで、二次性不眠の患者に対して本品を使用可能とすると判断

  • 適応の考え方も含めた適正使用指針の遵守
  • 主要臨床試験及び探索試験において二次性不眠患者が除外されていたことを添付文書等で情報提供
  • 上記の結論となったことが記されています。

    薬物療法と併用すること、第二選択療法として使用することの妥当性

    企業の説明と機構(PMDA)の判断は以下のとおり。

  • 企業の主張:本品を薬物療法と併用すること、第二選択療法として使用することは可能と主張した
  • 機構の判断:対面CBT-Iによる治療と適当と判断された患者に対して、本品を使用可能と判断した
  • 論点とその背景は以下の通りです。

  • 本品をA.薬物療法と併用すること、B.第二選択療法として使用することを可能としたいが、AとBは治験では除外されていた。
  • 以下で、具体的な背景を説明します。

    A.薬物療法と併用すること
    治験中は以下の薬物療法の併用が禁止されていた

    治験プロトコル 併用薬及び併用療法(1)

    治験中は以下の薬物療法の併用が禁止
    ・睡眠薬(不眠症及び睡眠障害への適応を持つ薬剤を含む。)
    ・市販の睡眠改善薬
    ・向精神薬
    ・抗ヒスタミン薬(第 2 世代抗ヒスタミン薬を除く。)
    ・漢方薬(黄連解毒湯、柴胡加竜骨牡蛎湯、三黄瀉心湯、加味帰脾湯、加味逍遙散、帰脾湯、酸棗仁湯、抑肝散、柴胡桂枝乾姜湯)
    ・睡眠に関連するサプリメント
    ・その他、不眠症状に対する有効性評価に影響があると治験責任医師及び治験分担医師が判断した薬剤

    サスメド社の申請書添付資料(STED)より

    B.第二選択療法として使用すること

    薬物療法を実施中もしくは直近14日以内に実施していた患者を除外

    治験プロトコル 除外基準(3)

    不眠症状の治療を目的とした睡眠薬(超短時間作用型、短時間作用型、中間作用型、市販の睡眠改善剤を含む。)、抗うつ薬、抗不安薬、漢方薬を服用中の患者、又は、治験登録前 14 日以内に服用した患者

    サスメド社の申請書添付資料(STED)より

    企業側は.薬物療法と併用すること、B.第二選択療法として使用することを可能とすることで、本品の使用制限を回避することで、販売に制約がかからないようにしたい意図があると思われます。

    この論点に対する企業側の説明と機構側の判断は以下のとおり。

    企業の説明

  • 本品を薬物療法と併用や第二選択療法として使用することを妨げるものではないと考える。
  • 理由:本品は、既存の対面CBT-Iで中核技法とされている機能を含んでおり、本品(CBT-Iを行うアプリケーション)は治験において、対面式での CBT-I と同等の有効性が示されている。

    審査報告書には明記されていませんが、おそらく「対面CBT-Iは薬物療法と併用や第二選択療法としての使用が許容されている」という前提があったと推測します。

    機構側の考え・判断

    協議された内容

  • 不眠症に対する認知行動療法マニュアルにおいて、CBT-I は、治療法を患者毎に選択することが提唱されている。また治療者の習熟度等や、患者の重症度や併存する疾患等に応じて、カスタマイズする必要があるとされている
  • しかしながら、本品はCBT-Iを構成する機能を有しているが、患者の状態に応じた個人療法は行えない。
  • 対面式でのCBT-Iと同等の有効性を有するかについては、評価されていない(治験において本品と対面CBT-Iの有効性が同等であることが示されていない、もしくはそれを示す文献等の根拠が乏しい)。
  • 専門協議において、 専門家から「心理療法においては不眠障害患者とのコミュニケーションが重要であり、本品による治療がうまくいかない場合、症状の悪化も想定される」と指摘があった。
  • 最終的な判断結果

  • 本品は対面式CBT-Iを実施する中で、不眠障害の治療に使用する選択肢の1つとして位置づける
  • 使用にあたっては、患者個々に対し本品を使用することが適切かを判断
  • すなわち、対面CBT-Iによる治療が適当と判断された患者であれば、本品を使用可能
    (不眠障害と診断されれば、誰が使っても良いというわけではない)

    最終的に対応事項として、本品の臨床的位置づけを踏まえ、「使用目的又は効果」を以下とすることを機構が指示した

    【使用目的又は効果】
    不眠障害の治療を目的に認知行動療法を行う。

    治療用アプリの適応について、企業側が考えておくこと

    不眠障害治療用アプリでは、治験で除外した患者層があっても、承認審査において適応について議論可能。治療用アプリ自体のリスクが低い(身体への侵襲性が低いことなど)ことを説明する必要があると考えられる。

    承認審査において適応の議論をする場合、どのようなリスクがあって、それらのリスクが許容できる理由を照会で説明する必要あり。治験結果の外挿だけでリスクを許容できない場合は、添付文書等の情報提供が必要になる

    承認審査で適応を議論する場合、企業側が理想とする適応が全て受け入れられるとは限らないため、ビジネスの観点から外すことができない患者層は治験で入れる、もしくはプロトコル相談(治験)において外挿可能性を検討しておくのが望ましい

    最大の課題

    さて、上記の議論では、本品は二次性不眠、薬物療法併用、第二選択療法については適応に含まれるという結論になっています。

    これは企業の主張が通ったように見えます。

    しかしながら議論の過程で、承認条件で「不眠障害に関連する十分な知識を有する医師」が付されており、これが不眠障害治療用アプリの処方を厳しくする結果をとなったことが推測されます。

    これは別のページで考えを記載していきます。

    このページは以下のページの続きです。

    不眠障害治療用アプリの承認条件|PMDAの臨床的位置付けに対する考え方

    参考資料
    [1] 令和4年12月19日 SUSMED不眠障害治療用アプリ Med CBT-i 審議結果報告書

    Filed Under: 医療機器プログラムの薬事手続き

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